浮心と重心についての間違い

水泳の世界では「肺に空気が入ってるため肺が浮きやすい、そのために浮心が重心より上にある」という説明がされるが、これは間違いです。

浮心が重心より身体の上部にあるのは正しいのですが、考え方が間違っているのです。そのため、伏し浮きの時にどのようにしたら水平なるかというような事が正しく考えられなくなっているのです。

浮心とは何か

ギリシャの数学者アルキメデスは浮力の原理を発見したことで良く知られています。浮力の原理をおさらいしてみます。

浮力の原理

全体、または一部分が液体に漬かった物質はすべての物質が押しのけた分だけの液体の重さに等しい力によって上へと押されている

身体が水を押しのけると考えるとき、肺がどこにあるかというのは関係ないのです。身体の体積の中心が浮心になるのです。ですから、水面に伏し浮きをしたとき、手を水面から出すと次のことが起こります。

水面に手を出した場合

1:手が出た分だけ浮力が減る

2:身体の上部の体積が減ったので浮心が少し足の方に移動する

重心はなぜ浮心より足の方にあるのか

では重心について考えてみます。重心とは身体の体積の中心ではなく重さの中心です。肺の中は空洞になっています。もし身体全体が均質でどこも比重が同じなら重心は体積の中心と一致するので浮心と重心は同じになります。しかし、身体の比重はその組織により違います。空洞である肺の部分は比重がとても軽いのです。ですから重心は身体の体積の中心より足の方になります。

重心が浮心より下にある理由は 肺があるから浮心が上にあるのではなくて、肺があるから重心が下にあるのです

スイムと浮心の関係

頭と脚の位置関係

体積中心の浮心が重心より足側にあるとき身体は頭が上がり脚が下がります

体積中心の浮心が重心より足側にあるとき身体は頭が下がり脚があがります

この二つのことをよく覚えておく必要があります。

バタフライのうねりの正体

バタフライではリカバリー動作(水面上に腕を出して戻す動作)をするとき水中にある部分は足の先から胸までになります。足の先から胸までの体積の中心が浮心になるので、浮心が重心より足側に来ます。

リカバリー後、身体全体が水中に沈むと浮心、つまり体積の中心は重心より頭側に移動します。

バタフライでは浮心が重心の前後に移動しながら泳ぐため身体がシーソーのように回転、逆回転をするわけです。これがバタフライのうねりの本質であり正体なのです。

最後に「沈む」のか「落ちる」のかということ

リカバリーの後半で手を前に出して上半身が水面より上にあると、次の瞬間「バッチャーン」と身体が水の中に落ちます。泳いでる本人は上半身が落下しているように感じますが、実際にはその時点で身体を上向きに押している浮心が重心より後ろにあるため、浮心を中心にシーソーのように身体が回転しながら沈んでるというのが正しいと思います。ですから落ちるというよりは「沈む」というのが正しく、よく観察してみると 胸・頭・腕の順番で水に沈んでいるのがわかります。